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「わ、私、ウーロン茶でいい」
小さく声をあげたみのりに、微笑みかけた彼は、頷いたのちに「ありがとう」と口にした。
夏樹の登場で沸き立つ女子の中、反応を示したのはみのりだけだった。
おそらく嬉しかったのだろう。
なんだかいいことをした気分になって少し照れてしまった。
「あの、えーっと、お名前は?」
「え?俺?」
不思議そうな顔をしてみのりを凝視した後、ふっと微笑んで名を告げた。
「菅原伊吹」
「伊吹くん…」
爽やかな彼にぴったりの名前だと思った。
夏樹に群がる女子を見ながら、困ったように笑っている伊吹に、みのりは更に声をかける。
「伊吹くんが幹事なの?」
「ああ、そうなんだ。夏樹が来ちゃったら収集つかないな、不甲斐ないよ全く」
「そんなこと、ないよ」
「……ありがと、みのりちゃん」
不意に呼ばれた名前に目を瞠り、みのりは小首を傾ぐ。
「え?なんで名前を…?」
「ケータイのストラップ」
「あ……」
さされた指の先をたどり、みのりは自身のケータイについているストラップを見た。
なるほど。
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