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「みーのりちゃん?」
「……」
「かわいい名前だね。いくつ?」
「……」
「学校はどこ?」
「……」
「ねぇ、何で無視ー?俺なんかしたっけ?」
凍りついたように動けないみのりに対し、しつこく親しげに話しかけてくる夏樹。
みのりの冷や汗は止まらない。
みのりの態度が、伊吹に対するそれと打って変ったのは、火を見るよりも明らかだった。
イケメンと関わるとロクなことがない。
これは絶対に違わぬ事実だ。
頭の中で呪文のように唱える。
「い、いえ別に……」
ごくりと唾を飲み下して、ようやく必死に絞り出した声はそれだけだった。
みのりが狙っているのは伊吹だ。イケメンさまさまなんて恐れ多い。
伊吹だけと話せればいいのだ。メアドが聞ければ万々歳だ。
なのに、どうして、よりにもよって、夏樹が話しかけてくるのか。
「話しかけてんのに、見もしないってどういうこと?俺の経験上ありえない」
ほら、そういうところ。
自分はかっこいいからって何でも許されると思ってる。
入って欲しくない領域に踏み込んでいるなんて、考えもしないくせに。
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