265人が本棚に入れています
本棚に追加
「伊吹くん……」
(こんなラッキーなことってあるかしら)
これは二人で抜けるチャンスだ。
途端にフル稼働の脳内で策を練るみのり。
目の前には温和なウサギが、何も知らずに頬を掻いた。
今日は、今日こそは恋人をゲットだ。
「えっと、大丈夫?なんかさっき顔真っ青だったからさ、心配になって……」
「気にしないで、ちょっと飲み過ぎちゃったみたい」
「え?ウーロン茶を?」
本当に純粋というか、そこを突っ込むか?と思いつつ、笑顔を浮かべて、みのりはスイッチを入れた。
女の子は可愛げがなきゃだめだ。
ありのままの自分を受け入れてくれる人?そんなの人生に会えてもたった一人くらいだ。
いつもメイクで変身して、モテるしぐさで、オシャレな服を着て。
愛を勝ち取るには、努力が必要なことを知っている。
「心配してくれたんだね、ありがとう」
「余計なお世話かなって思ったけど、そう言ってくれてよかった」
「そんなことないよ、追いかけてきてくれてすごく嬉しい」
邪魔にならないように通路の端によりながら、みのりはしおらしく答える。
最初のコメントを投稿しよう!