プロローグ

3/7
前へ
/23ページ
次へ
あり得ない快感がわたしを襲う。 うはぁ…。 感無量です。 周りから妬む視線を感じます。 わたしはそんな事など気にせず、ウキウキ気分で万馬券を眺めます。 「うへへ」 きっとだらしない顔をしてますね。どうしましょう。にやけが止まらない。 最近お馬さんで負けてましたから、無理はないですね。 さて、換金所に行きましょう。 これがわたしの運命だったのでしょうか。 一陣の強風が、吹き抜けた。 「うわ……!?」 突然の強風、一瞬の油断。 「あ! ああ!!」 わたしの掌の中にあった万馬券が風に煽られスルリと抜け落ちた。 わたしの勝者の証(万馬券)が! それが分かれ道。 「くっ!」 わたしは、焦り、万馬券を掴もうと手を伸ばして床を思い切り蹴った。 「逃がすか!」 身体を宙に浮かし腕をいっぱいに伸ばした。 必死。元カノにフラれ、彼女に縋った時を凌駕するほど、わたしは必死だった。 「うおおおおお!」 叫ぶ。逃さない。わたしの生活費! 紙くずに混じれば、探すのは困難。 願い、泳ぐように、わたしは逃れた万馬券を空中で掴んだ。 階段の上で。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加