29人が本棚に入れています
本棚に追加
あり得ない快感がわたしを襲う。
うはぁ…。
感無量です。
周りから妬む視線を感じます。
わたしはそんな事など気にせず、ウキウキ気分で万馬券を眺めます。
「うへへ」
きっとだらしない顔をしてますね。どうしましょう。にやけが止まらない。
最近お馬さんで負けてましたから、無理はないですね。
さて、換金所に行きましょう。
これがわたしの運命だったのでしょうか。
一陣の強風が、吹き抜けた。
「うわ……!?」
突然の強風、一瞬の油断。
「あ! ああ!!」
わたしの掌の中にあった万馬券が風に煽られスルリと抜け落ちた。
わたしの勝者の証(万馬券)が!
それが分かれ道。
「くっ!」
わたしは、焦り、万馬券を掴もうと手を伸ばして床を思い切り蹴った。
「逃がすか!」
身体を宙に浮かし腕をいっぱいに伸ばした。
必死。元カノにフラれ、彼女に縋った時を凌駕するほど、わたしは必死だった。
「うおおおおお!」
叫ぶ。逃さない。わたしの生活費!
紙くずに混じれば、探すのは困難。
願い、泳ぐように、わたしは逃れた万馬券を空中で掴んだ。
階段の上で。
最初のコメントを投稿しよう!