0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
大げさなほど重厚な造りの鉄の扉が、重々しく開かれる。
扉の隙間から光が差し込み、次第に眩い光に包まれていく。
視界が戻ると、城下へと続く長い石造りの立派な橋の行く手に、蒸気機関を備えた最新式の三輪駆動車が、もくもくと高温の白い蒸気を噴き出しているのが見えた。
「ベルトラ!ベルトラじゃないか!」
三輪駆動車から顔を出し、青年は笑顔で手を振って私の名を呼んだ。
蒸気の尾を引きながら、長い石橋から城門前にいる私のところまで来るのにそう時間は掛からなかった。
橋は、断崖にそびえ立つ城へと続く、唯一の連絡道にしてエニアック王国最大の建造物。
遥か真下には、遠く離れた巨大な滝から続く川が流れ、原始の森がどこまでも広がっている。
橋から見渡す景色は空にも劣らない壮大さで、宙に浮いているような感覚を起こさせる。
三輪駆動車から降りた青年は麻で編んだ衣服という簡素な出で立ちで、その上ところどころが真っ黒な油で汚れていた。
「その鎧、やっぱりベルトラに良く似合っているよ」
貴重金属のミスリル銀を惜しまず使い仕立てられたフルアーマーの鎧を再び鍛え直し、必要最小限の耐久性に留めて軽装化させたミスリル甲は、光を反射して輝いている。
そして腰の両脇に帯びた双剣は、共に多くの死線を超えてきた戦友であり、私の身体の一部でもある。
最初のコメントを投稿しよう!