あの頃、まだ幼かった僕らは無邪気で

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(なんだオレ、やっぱ傷ついてんのか?) やめやめ、と悠里は頭を振って思考を打ち消した。 この先もずっとこの生活は続いていくのだから、現状に悩んで深みにはまるのはごめんだ。 キリがない。 しばらく悶々としながら歩いて住宅街を抜け。道を渡ったさきにようやく開けた原っぱが見えてくる。 フェンスもなければ『私有地』と伝える立て札もない不親切な所有地を、悠里は我が物顔で土足を踏み入れ緑を登る。 緩やかな勾配(こうばい)の先に一本佇む木のもとに辿り着いて、花をまとった枝々を見上げれば、ほう、とようやく息が抜けていった。 暗がりで今は桃色を失っているが、闇が花の輪郭を淡く際だたせる情景も悠里は好きだった。
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