あの頃、まだ幼かった僕らは無邪気で

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「…!?…」 吸い込んだ空気は戦慄を前に悲鳴にもならなかった。 こちらを振り向いた男の目は白目をむき、口から乾いた泡を吹いていた。 「ユーリッ!」 ガタン、と乱暴な音に配慮もなく勢いドアを開いて、古く小汚い十帖一間にしわ一つない小綺麗な身なりの少年が立ち入る。 今は空き缶ひとつない片された卓の前に、何をするでもなく膝を抱えていた悠里が振り向いた。
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