あの頃、まだ幼かった僕らは無邪気で

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「急性アルコール中毒、だってさ。あんだけ酒飲んでたヤツが、最後は酒に呑まれちまったとか笑えねーよな」 歪んだ親子関係だったことを、楓麻も察してはいた。 悠里が毎日のように作ってくる傷を見れば嫌でも家庭内暴力を疑う。 しかし悠里は父親から逃げることを考えてはいなかったから。 どんな仕打ちを受けても男を父親だと思うことを、やめなかったから。 引きはがしたい苛立ちを抑え込んで、悠里の意志を尊重してきた。 それは正しかったのか、こんな形で終止符が打たれてしまった今は、知ることもできない。
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