あの頃、まだ幼かった僕らは無邪気で

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最終的にここまでされることは滅多になかったが、その滅多なことが起きてしまったときも悠里は抵抗したことがなかった。 この期に及んでは、逃げないというより逃げる気力が消え失せるのだ。 目の前の光景が、自分の身に降りかかっている事実があまりにも現実離れしすぎていて、意識が夢を見ている感覚にほど近い麻痺を起こす。 ーーー悠里は押し当てた腕の下でじっと目を閉じ、ことが全て終わるまでひたすら襲い来る痛みをやり過ごした。
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