隧道の果てには

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「あれは、杖か」 クシナの使い魔は、小降りの杖。 魔法型だ。 だが頭に、棘の生えた玉が着いている。接近戦にも特化した使い魔だろうか。 対するメイは、薙刀。槍に似たリーチの長い獲物だ。刀身は刀の様に反っている。戦士型だ。 ミチがそれを確認したのも束の間、メイは薙刀を回しながら接近する。風の魔法で速度を飛躍的に上げた身体を、矢の様な速さでクシナに接近する。 魔法型には、接近し印を描かせない。これが鉄則だ。 クシナはバックステップで距離を取りながら、印を描く。 「速い」 緑色の印はあっという間に完成し、突風を発生させる。 詠唱破棄だ。 メイは突風に耐えながら薙刀を振るうが、クシナは杖でそれを防ぎメイのお腹を蹴り付けた。 短い悲鳴を上げながら、メイは吹き飛び地面を転がる。それは突風の力も合間って、クシナと距離が出来てしまった。 「有効打一本!」 エマが手を上げる。先程のクシナの蹴りだろう。 「まずいな」 隣のジョンが呟く。 その隙にクシナは印を描いていく。緑色のそれは風属性だ。 ただ、下級魔法ではない。それより何倍も複雑な印は、中級魔法だろう。 「Boreas wo bossy(横暴な北風)」 クシナの詠唱と共に召喚されたそれは、先程の突風とは比べものにならない程の空圧だった。 それは、メイを軽く持ち上げ壁へとぶち当てた。 メイは立ち上がれず、ばたりと倒れてしまった。 エマが近付き、メイを確認する。 「勝者、クシナ=ランパー!!」 どうやらメイは気を失ったらしい。 パチパチと疎らな拍手の中、クシナは鼻で笑い控室へと戻った。
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