隧道の果てには

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それと同時に相手は斧を片手に、突進してくる。 速い。 風の魔法だろう。 あっという間に、接近してきた相手は斧を振り上げる。 それを冷静に見ながらミチはマナを込める。 ディアボロスはパラパラ開き、そして止まる。 「Yama do roar(閻魔の咆哮)」 詠唱と共に召喚されたのは、風の塊。 マナを強く練り合わせたそれは形を成す。それは漆黒の極大なヒトの顔。瞳もない凹凸だけののっぺらぼうだ。 限界まで口を開けたそれは、筆舌に尽くし難い悍ましい咆哮を上げた。 風圧の暴力。 振り下ろされた斧はミチに届くことも無く、対戦相手は声をあげることなく猛スピードで壁へと激突した。 閻魔の咆哮は風属性の防衛魔法。対象が近付くことを許さない、暴風の壁。それは魔法をも呑み込む風圧の塊だった。 「有効打一本!」 エマのそんな声を聞きながら、ミチはまたマナを込める。 「Runner biz jumble(渦巻く本能)」 赤い印から召喚された炎のうねりは、闘技場の壁を巻き込みながら対戦相手に襲いかかる。 舞い上がった風塵が消えると、そこにはぐったりと倒れた対戦相手の姿。 「勝者!ミチ!」 時間にしてわずか数秒。 ミチは声援を聞きながら、控室へと戻った。
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