211人が本棚に入れています
本棚に追加
それと同時に相手は斧を片手に、突進してくる。
速い。
風の魔法だろう。
あっという間に、接近してきた相手は斧を振り上げる。
それを冷静に見ながらミチはマナを込める。
ディアボロスはパラパラ開き、そして止まる。
「Yama do roar(閻魔の咆哮)」
詠唱と共に召喚されたのは、風の塊。
マナを強く練り合わせたそれは形を成す。それは漆黒の極大なヒトの顔。瞳もない凹凸だけののっぺらぼうだ。
限界まで口を開けたそれは、筆舌に尽くし難い悍ましい咆哮を上げた。
風圧の暴力。
振り下ろされた斧はミチに届くことも無く、対戦相手は声をあげることなく猛スピードで壁へと激突した。
閻魔の咆哮は風属性の防衛魔法。対象が近付くことを許さない、暴風の壁。それは魔法をも呑み込む風圧の塊だった。
「有効打一本!」
エマのそんな声を聞きながら、ミチはまたマナを込める。
「Runner biz jumble(渦巻く本能)」
赤い印から召喚された炎のうねりは、闘技場の壁を巻き込みながら対戦相手に襲いかかる。
舞い上がった風塵が消えると、そこにはぐったりと倒れた対戦相手の姿。
「勝者!ミチ!」
時間にしてわずか数秒。
ミチは声援を聞きながら、控室へと戻った。
最初のコメントを投稿しよう!