隧道の果てには

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その日の夜、一年生のロビーは大騒ぎだった。 「相手が右から来るだろ?それを読んだ俺がこうやって避けて、そいでこうやって魔法を放ったわけさ!」 テーブルの上に立つギンタが、クラスメートに自分の奮闘記を身振り手振りで話す。 それにジョンとライアンが合いの手を入れるものだから、周りもさらに騒ぎ出す。 負けた対戦相手もあの舞台に立っていたことが誇らしく、お互い健闘を称えていた。 それくらい、あの初舞台は興奮に満ちたものだった。空から降ってくる歓声は、肌をぴりぴり刺激して、心を揺さぶった。それはあの舞台に立った者しか味わえない感覚だ。 ミチも自分の勝利の喜びを密かに噛み締める。 そして次の相手は、チェスター。 ああいった挑発に慣れているミチはさほど気にしていなかった。 だが負ける気もなかった。 自分は目立つことが好きではない。でも満席の客席に囲まれ、決勝の舞台に立つ自分を想像してしまう。 そこからの景色をみてみたい。そう思ってしまう引力が闘技大会にはあった。 らしくなかったかな。 熱くなった頭を冷まそうと、ミチは校庭へと出ることにした。 まだ"大宴会"は終わりそうにない。 ロビーを包む熱気に押されるように、ミチは静かに外へ出た。
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