ギルドキャンプの注連縄

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"なぁ" 手話でサエの顔の前で指を降る。 "何?"それに気付いた彼女が視線をミチに移す。 "どのクエストにする?" 睨む様に見てくるサエに質問をする。 このギルドキャンプは、ただ一週間未開の地で寝泊まりするわけではなく、課題があった。 それは実際にギルドが請け負っている仕事でもあり、終われば給与もちゃんと貰える。 「いやぁ。楽しみですね」 「……」 ギンタが相変わらずこの調子なので、仕方なく自分で進めようと思ったのだ。 "この薬草のクエストは?" サエが何種類かある紙の中の一枚を指差した。 顔と同様に白磁の様な細い指だった。 "これ結構奥深いところだぞ。大丈夫か?" 国土から離れる程、兇魔と出くわす可能性が高くなり、そして凶悪なモノが多くなる。 といっても、ギルドキャンプに出るクエストなのでそこまでの危険は無いと思うが。 "いい思い出作りになるんじゃない?" そう言うと、サエはまた頬杖をついて窓の外を見る。 その表情はどう見ても、いい思い出を期待していると思えない。いつも通り、素っ気ない。 あの夜の喧嘩の事など、何も無かったかの様に無表情だ。
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