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「そうだぞっ!思い出作りは大切だぞっ!」
隣に座るギンタが声と共に手話でいきなり割り込んできた。
サエが驚いた顔でギンタを見る。
「手話少しミチに教えてもらったんだ」
その理由に気付いたギンタは人懐こい笑顔でサエを見る。
"……何で?"ミチとギンタを見るサエ。
"同じギルドキャンプの班同士!友達だろ!"
たどたどしい手話でギンタが答えると、サエは驚いた表情をする。
いつも無表情な彼女の今の表情は、とても新鮮だった。
「凄いですっ!」
するとサエの隣に座るアンジュがキラキラした瞳で手を合わせている。
「ミチさんって手話出来るんですか?私にも教えて下さい。サエさんと私もお友達になりたい」
その言葉にサエはまた戸惑う。
「ア、アンジュさん!こんな仏頂面の奴に教わるなんてそんな!!」
必死に手を振るギンタといつもの仏頂面のミチ。
「アンジュはギンタに教えてもらいなよ。ギンタもある程度手話出来るから」
「呼び捨てにするなよ!ミチっ!アンジュさんだっ!!」
助け舟を出したのにまさか怒られるとは。
「いいえ。私の事は、アンジュでいいですよ。ギンタさんっ手話是非教えてください」
両手を合わせ上目遣いで懇願するアンジュ。
「……はい」
ギンタは、顔を赤くしながら頷いた。
ミチがちらっとサエを見れば、
彼女は
"ありがとう"
と手を動かすと、また頬杖をついて窓の外を見た。
その横顔は、さっきと違って照れ臭そうに微笑んでいた。
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