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すると校舎の方からアルマがその他先生陣を連れて歩いてきた。
老人とは思えない軽快な足取りのアルマは、ミチを超える長身だ。
いつものエメラルドグリーンのローブと三角帽子。お腹まで伸ばした真っ白な髭を触りながら一年生の前に立つ。
噂だとアルマ校長は今世界を飛び回っているらしく、学校にいることは稀だという。実際ミチも入学式以来久々に見るアルマの姿だった。
その隣に、エマや他のクラスの担任の先生が立つ。
騒がしかった音が自然と静まり、皆アルマを注目した。
「いよいよじゃの諸君。未開の地には兇魔がおる。彼奴らは狡猾で、獰猛な生き物じゃ。命を刈り取る事に躊躇もせん。もし出逢ったのなら、大義を忘れることなかれ」
アルマの声には、自然とヒトを落ち着かせる響きがある。生徒と他の先生は静かに傾聴する。
「友を守る。自分の大切なモノを守る。共に生きることを考えるのじゃ」
アルマの緑の瞳は鋭く、紡がれた言葉は重い。
「して、未開の地は危険ばかりではない。まだ見ぬ浪漫がある。広がる世界がある。その目で、見るのじゃ」
「はいっ!」
一転、微笑むアルマの言葉に生徒は期待に胸を踊らせ、返事をする。
「上々じゃ。気を付けて行っておいで」
手を上げ応えるアルマは話を終えた。そして代わりにエマが一歩前へ出る。
「もうギルドキャンプは始まってるぞ。各自地図は持っているな?一週間後校庭で会おう!解散っ!!」
エマが叫ぶと、生徒達は一気に騒がしくなる。そしてそれぞれ校庭から出ていった。
その後姿を、微笑みながら先生は見ていた。
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