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一方、ギンタはまだ起きていた。
寝袋に包まれ、仰向けになりながら曲線を描くテントの天井を見つめている。
今日、ピースラインを初めてこの目で見た。あの平和を囲む幽玄な注連縄を。
それで教書の知識だけでは本当の事は解らないということを知った。
それで思ったのは、ミチの事だ。
アースから来たミチ。
学園で出来た親友だ。少なくともギンタはそう思っている。
だがミチは、感情が読みにくい。
もしかして、友達だと思っているのは自分だけではないか。そう思ってしまうくらい、彼は自分の気持ちを表に出さない。
ミチの境遇は聞いていて分かっているが、"解っては"いない。
そんなミチは、今日言葉少なげだが、心の内を話してくれた。
彼は、後悔していると言った。
母に逢えるのなら、謝りたい。そう言った。
己の内面を人に伝えることが苦手なミチは、それでも自分の言葉で語ってくれた。
それが、嬉しかった。それが仲間の証の様に感じた。
他の二人も、同じ気持ちだったのだろう。
だからこそ、お礼を言ったのだ。
話してくれて、ありがとう。
だけどーー
だけど、そんな自分にも親友に打ち明けていないことがある。
ギンタは思わず、にやける。
そのまま仰向けのまま右に首をよじる。
真ん中に仕切りのカーテンを引いているが、その向こう側。
ここからだと見えないけど、きっと綺麗な寝顔なんだろうな。
自分の住む王国の王女、アンジュ……さん。
自分の初恋の人。
身分違いにも程がある。告白なんて出来ない。いやそんな勇気ない。いや、告白してみたいけど、やっぱ、無理!今は、無理だ!
ギンタは強く首を振る。顔が赤くなるのが自分でも解る。考えただけで、こうなっちゃうんだから絶対無理だ。
打ち明けたいけど、出来そうもない。
自分の気持ちを正直に伝えることは難しい。
ミチ、お前ってばやっぱすげぇよ。
これを話してやったら、ミチとサエ驚くだろうな。
ギンタは火照った顔を冷ましながら、寝る努力をした。
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