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ギンタを筆頭に弾んでいた四人の会話は、段々と小さくなっていく。
まだ緩やかとはいえ、坂道。それも整地の行き届いていない山道と背負う重い荷物は、早くも四人の体力を削っていた。
唯一の救いといえば、木陰と曇天のおかげで昨日より涼しいというくらいだ。
歩ける道幅はそこまで狭くもないため、昨日の様にギンタとアンジュが並んで前。その後ろにミチとサエが続く。
「意外となーんもねぇなぁ」
前を歩くギンタの黄色に近い金髪は、背負ったナップサックに隠れて見えない。だがその肩は残念そうに下がっている。
続く景色は、生い茂る樹木と草花だけ。曇天の効果で、生命の煌めきよりどこか陰鬱な印象も与えてくる。
まだ見ぬ浪漫。
予想はしていたけど、未開の地に対する期待は簡単に裏切られて、それが疲労に繋がっていた。
「兇魔……。出ないかなぁ」
「そうですね。まだ麓に近いし、難しいかもしれないですね。」
ギンタの言葉に、頷くアンジュの足取りはまだ軽い。
正論である言葉とは裏腹に、ギンタと同様に兇魔をこの目で見てみたいという気持ちが滲んでいた。
ミチも、まさに同じ気持ちだった。
アースには存在しない、生命のない邪鬼。
狡猾で獰猛。昨日のアルマの言葉が頭の片隅に過るが、それでもこの目で見てみたい。その好奇心の方が、出逢う恐ろしさなんて簡単に上回っていた。
教書で見る兇魔の姿は多種多様だが、総じて影の様に黒い。
兇魔ならすぐに見つかると思っていたのだが、そう簡単にはいかないようだ。
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