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「ア、アンジュさんっ。兇魔が出てきたら俺が華麗に撃退するから見ててねっ!」
ギンタが、使い魔のカリバーンを出したり消したりしながら、息巻く。
「はいっ。一回戦を突破したギンタさんなら安心ですね」
アンジュのその言葉に、嬉しそうに頭を掻くギンタに、思わず溜息をつくミチ。
隣を歩くサエも、微笑みながら二人を見ていた。
どうやら、サエもギンタのアンジュに対する気持ちに気付いている様だ。
ていうか気付いていないのは、アンジュだけか。
ギンタの想いが届くことはあるのだろうか。そんなことを考えていると、樹々の葉が擦れる音が聴こえた。
ーーガサガサ
再度、音。
その音に、思わず立ち止まる三人。その理由をサエは分からず、どうしたの?とミチを見上げる。
音はミチの右側、ちょうどサエを挟んだ向こう側から聴こえた。
ミチとギンタは、サエとアンジュを守る様に前に出て、身構える。
ミチも、いつでもディアボロスを召喚できるように左胸に手を当てる。鼓動が早いことに、気付いた。
次第に、草をかき分けるかの様な音はこちらに近づいてくる。
「おや、奇遇ですね。王女様」
樹々の間から出てきたのは、黒みの強い青髪と瞳を持つ、ミチの同級生の男、チェスター。
闘技大会が始まった頃から、何かとミチとギンタに絡んでくる因縁の仲だ。
その後ろには、チェスターの腰巾着のクシナ。そして女子二人。チェスターのキャンプ班のメンバーだろう。
「逢いたいのはお前じゃなくて、兇魔だっつーの」
ギンタと顔を見合わせ、ほっと息をついた。
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