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「……」
「宝石はやはりシルバニア産の物に限りますよね」
「はいっ。私はハーレクインよりプレーオブカラーの方が好きです」
「僕もそうなんですよ。僕達、気が合いますね」
「…………」
昼飯の場。ギンタの腹を満たすのはストレスだけだった。
胡座をかくその足を、不機嫌そうに揺すっている。
相変わらずアンジュの隣に座るチェスターは、ギンタを置いてけぼりにする話題で盛り上がっていた。
少し離れた所に座るギンタとアンジュ達の間に、クシナが壁の様に座ってギンタを鼻で笑う。
引き千切る様にパンを噛むギンタ。
自分の予想が甘かった。
黙々とパンと木の実を食べるミチは、この重い空間を造る"もう一つ"の懸念材料を座視する。
その目線の先には、サエ。
無表情だが、いつもより食べるペースが速い様に思える。出来るだけ早くこの場から去りたいと思っているのだろうか。
そう推測するのも簡単。
目線をチェスターの班の女子に移す。
その女子はこの前サエを取り囲んでいた生徒だ。
女子生徒を引き連れていたリーダー格である、赤髪のルアンナ。そしてオレンジの髪のリーザ。
冷たい目線で、サエを睨みつけている。
聞けばこの二人も貴族出身らしく、女版のチェスターとクシナ。そんな印象だった。
王女の手前、表立った攻撃はしないと思うが少し不安を覚えてしまうミチ。
ギンタとチェスター。サエとルアンナ達。
空模様は相変わらずの曇天。でも朝より雲の位置が低くなった気がする。
山を登ったからだろうか。近くなった雲は鉛の様に黒く重い。
まだ見ぬ浪漫……。
それがどうも皮肉に思えてしまうミチだった。
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