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僕は人形じゃないし、それなりに欲だってある。
好きな人と手を繋ぎたいとか
キスしたいとか
その先だって夕くんとなら――
それなのに
ああ、もう昔のことは考えないようにしよう
今日もお決まりのチェアーに座って、厭きもせずに髪を弄っている僕の悩みの元凶。
そんな夕くんを見つめると、どうしても少し薄くて形のいい唇に目がいってしまう。
キス……したい
でも『そんなことしなくていいんだよ』って、又、言われたくない。
僕は以前、草食過ぎる夕くんに焦れて唇を奪ってやろうと、髪を弄っていた顔に顔を寄せたことがあった。
だけど、夕くんに寸でのとこで唇に掌を当てられて邪魔されてしまったのだ。
今度は思い切って『キスしよう』と言うと先程の言葉が返って来たというわけだ。
僕じゃなくて
夕くんに性欲がないのだろうか
って、決めたそばから、又、昔のこと思い出してどうすんだよ。
落ち込むから考えたくないのに……
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