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PM.11:46――
日もすっかりと落ち、夜闇が辺りを包み幾多の人は眠りに附く。
だが、都市は眠らず。
――街頭の灯り、ヘッドライト……様々な明かりがそれを象徴させ、夜空を照らしていた。
「ふぅー……」
高層ビルの屋上・展望台に、男が1人。
ポツリポツリと雨が降る中、レインコートを着ず、傘も差さずに立っていた。
無数の雨粒が衣服に染み込み、体温を奪っていく。
奪われる体温を上げる・保つ為に何度か手で身体を擦る。
――その時が来るまで。
「そろそろ……か」
その時は来た。
腕時計で時間を確認した彼は、足下に置いといたアタッシュケースを開ける。
仕舞われていたのは分解された狙撃銃。
手早く正確に、手慣れた手付きでこれら部品を組み立てていく――時間にして、僅か20秒。
冷たいコンクリートの縁に左肘を置き、狙撃銃を構える。
×12倍率スコープを覗いた先は、軽自動車や都営バスやらが行き交う交差点。
其処が狙撃地点(ポイント)だ。
距離にして1.4km。
高層ビルからの高さも加えると、約1.6kmになる。
交差点から水平に少し右に照準を動かすと、建物の間から僅かながら通りが見える。
一瞬のことだ。
――藍色の車が通り過ぎた。
「……!」
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