SNIPEⅠ~裏路地の喫茶店~

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カランカラン、とドアに備え付けられた呼び鈴が店内に響く。 コレは当たり前のことだが、何せ引き籠もりの彼女はヒドく驚いた。 (ななな、何だ……ただの鈴か……) 心の音が高鳴る胸を押さえ、店内へと進む。 「おや?こんな時間にお客様とは珍しい」 「っ!!!?」 人の声にも敏感に反応し驚愕した彼女は、無意識に背筋が伸びた。 そんな彼女に近付いたのは、この喫茶店の経営者(オーナー)でたった1人の従業員である男性。 紳士服が似合う容姿端麗で美形顔(イケメン)。 「ようこそいらっしゃいませ。お客様、お一人様で宜しいですね?」 ――それに比例して、声質は爽やかで透き通っている。 「ふぁ……ふぁい…」 今の今まで引き籠もっていた為、営業スマイルや接客などなどに慣れて無くゲシュタルト崩壊しかけ、涙を眼に浮かべながらも返答した。 「分かりました。では、コチラへ」 彼は気味悪く思うことも不思議がることも無く、通常通りに接客――席に案内する為に先立って歩いた。 一方、引き籠もり少女はその場に動けずにいた。 (うぅ……何アレ、何あのスマイル……。それにあんなイケメンPCゲームでしか見たことないよ……!) 彼女のとっての驚きの三連続で高鳴っていた胸の鼓動は更に速くなっているのが押さえている手で分かり、息も荒い。 これらを止める為に止まっていたのだ。
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