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「どうぞ、コチラです」
「ふぁ…ふぁい…」
案内された席はカウンターテーブルの席だった。
「メニューはコチラに御座いますので、オーダーがお決まりになりましたら、お呼び下さい」
「は……はい……」
今度は変な返答をしないように心掛けていたが、先程の混乱で赤面してしまった顔を俯かせていた。
彼女の返答を聞いた彼は一礼。
すぐさまカウンターキッチンに入り、オーダーを待つ。
「…………」
赤く染め上げた顔を俯かせたままの引き籠もり少女は、オーダーを言わずカウンターテーブルに隠した手々をイジっていた。
「どうしよう…どうしょう……」と、思っていたことだろう。
チラリチラリと目線を上に向けると、従業員が笑顔でオーダーをしてくるのを待っているのが、眩しく見えて何度も視線を綺麗に清掃された床に戻したことであろうか。
だが、行動に移さなければ進まないと言う事を引き籠もり少女も分かっていた。
そんな機会(チャンス)を今までの人生で、何度逃したか。
その機会を掴めば、何が起こるのか、未来は分からないが、それを試す時だった。
意を決して、彼女は口を開く。
「あ、あの……」
「はい」
オーダーだと思い、変わらず笑顔でお応え致す。
「ひ…、『挽き立ての、ブラック豆はありますか……?』」
「…………」
このオーダーを受け、笑顔で固まった彼が身体をピクリと反応させた。
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