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私(わたくし)が部屋に入つた頃には
もうすでに
彼は白雲の欠片に
御帰りになられていて
私が何度お名前を申しあげましても
ふふんと鼻を鳴らす程度の
次第でございまして
それ程までに
私の胸は
ぬくもりが足りませんでしようか
と、
尋ねましたところ
此処よりも
貴方の温度が
上がってしまったから
もう其処を
故郷にしてしまわなければ
私は溶けてしまうのです
私はほどけてしまうのです
と、
涙を流して
おられました
すると
どうでしよう
涙の落ちた部分から
幾つかの黒点が生まれ
私は彼を
美しいと
思えてしまつたのです
そして明後日には
彼は私の胸に
また頬を寄せに
来られるので
私は腸の奥から
ぷつふつと
熱くなつてゆくのです
それが宇宙の終わりであつても。
【太陽と地球】
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