£ 序章 £

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 海原で一点を幾つもの島が集中する場所がある。 それらは涙(るい)島とまとめて呼ばれていた。  その中でも一段と港が賑わうのは、最も広い島だ。 別名を涙大(るいだい)島ともいう。  港は複数の船が停泊し、整備された道路を人々が和気あいあいと歩いてく。 「今日飲みにあかそうぜ!」 「早くしねぇと酒と女を取られちまう」 「真っ昼間から酒浴びるやつがうるさくてよー」  ここで耳にするのは大半が男性ばかりだ。  真っ昼間から羽目を外そうという魂胆が言葉となって活発していく。  この涙島は数世紀前、娼婦と居酒で名を知らしめた。  幾つもの遊廓、娼婦館が疎らに建てられ、彼らを支配する者が君臨する。  白と淡黄色が織り成す、美しい館は清潔感で溢れている。  島の在住者でも最も特殊でとりわけ上層部にもあたる、稀有な階級だ。  高級娼婦として女性が住む、所謂自宅であった。  観光地としては有名な島でも、稼ぐために海を渡る娘も多数在籍している。 「瑠璃斗(ルリト)!」  明るい日差しが木葉の影を映して廊下を照らす。
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