£ 序章 £

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 黒髪をやや短く切った長さに加え、前寄りの両面の一部だけ肩にかかるまでに長い。  身長は高く、一見成人した青年に見間違うほどに凛々しく背筋を伸ばしている。  女性的な胡桃色の肌、少し吊り目がちの瞳は桜の色をそのまま移したように儚さを帯びていた。  顔立ちは良くも悪くも普通、中性的な雰囲気が印象に残るくらいだ。 「おい、瑠璃斗。聞こえてるか?」 「……なに?」  先程から腕を組んで威圧する男性を一瞥し、瑠璃斗は窓へ再び視線を戻す。  年は二十四になると聞いた、瑠璃斗とは七つも離れている。 素っ気ない返事に、栗毛のボサボサとした頭を彼は困ったように掻いた。  廊下ですれ違う様、大胆にも胸を強調した娘たちが通り過ぎていく。 「あの女が手伝え、と。それとマリアさん帰ってきたぞ」  その意図に気づき、瑠璃斗は面倒臭いと内心毒づいた。  口に出せないもどかしさに溜め息を代わりにつく。 「……ママのとこ先に行く」  気だるそうな声で瑠璃斗は決めると、彼は苦笑を浮かべた。 「俺がいるから大丈夫よ」 「大薙(だいち)がいても変わらないと思う」
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