5人が本棚に入れています
本棚に追加
「すまん……今起きたことはその…誰にも言わないでくれないか」
「え、ああ、えっと、まあそれは、うん、言わない。でも何で舐めたの?」
黒野はその場にずるずると崩れ落ちた。
「俺………鼻血フェチなんだ」
「鼻血………フェチ?」
「性的嗜好、ですか」
「ええと、つまり、鼻血に性的興奮を覚えるということ…なんだ」
屋上に気持ちのよい風が吹き渡り、あたしたちの汗ばんだ肌を撫でた。
「それは…アレだな」
「アレですね」
「我ながらアレだよ。…こんなことしておきながらナンだけど、皆に言触らしたりはしないで欲しいんだ。生徒会長が性倒錯者だなんて知れたら、誰もついて来てくれなくなる」
「それもそうですね」
あたしの血付きのティッシュを丸めながら、玲人は真顔でそう言った。
「そうかなー。鼻血フェチの生徒会長がいたっていいんじゃない?」
「また先輩は適当なことを…」
ガツンッと衝撃があって、気がつくとあたしは黒野に手を掴まれていた。
「ありがとう、木崎!俺の趣味を分ってくれるんだな!?」
「え、いやあの…まあ、わからなく…なくなくなくもない…かな?」
背後で玲人の深い溜息が聴こえた。
「そうか!嬉しいよ、俺!木崎、優しいんだな…」
優しくした覚えは微塵もないが、変態を怒らせるのは怖かったので黙って頷いておいた。
「木崎、優しいお前を見込んでお願いがあるんだけど」
「お、お願い?」
「俺に鼻血を供給してくれないか…?」
「いや」
「何故!」
「嫌だから!理屈じゃないから!」
「頼むよ木崎!こんなこと頼めるのは木崎だけなんだよ!」
「悪いけど無理だ!他を当たってくれ!大体鼻血を供給するってなんなんだよ!」
「舐めさせてくれるだけでいいんだ!さっきの木崎の鼻血、すごく良かった!」
「きめえ!おい玲人!この変態なんとかしてよ!」
「はー。まったく先輩は馬鹿ですねえ」
玲人は口元に笑みをたたえてあたしと黒野の間に割り込んだ。
あたしは素早く玲人の影に隠れる。
「閖原くん、悪いけど俺はいま木崎と話して…」
「冷静になってください生徒会長、鼻血なんて自由意思で出せるものではないですし、第一双方の身体に悪いですよ」
「ん、ああ…それもそうだな」
「分って頂けたみたいで嬉しいです」
玲人はにっこりと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!