フェティシズム

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「トマトジュース?」 「トマトジュースをあたしの鼻から垂らして、鼻血のように見せる。あんたはソレを好きなだけ舐めるのよ」 「…でも生徒会長は血でないと満足できないのでは」 「いや、いい…それでいい…。俺は鼻から赤い液体が出ているってのに興奮するんだ。味なんかどうでもいい。思い込めばなんとかなるし、木崎のだったらなんでも……」 断っておくが、普段の黒野遥はここまで気色の悪い男ではない。 教師からの信頼も厚く、頭の回転も速い。 爽やかで情に篤いことで評判の完璧な好青年なのだ。 「そ、そうか。ならいい良かった。ただ、ひとつだけ条件がある!」 「よし、俺にできることなら何でもきこう。木崎の鼻血のためだ」 「先輩!」 「れいと、あたしに任せておいて」 あたしは玲人にウインクを送ったが、彼の不安を煽っただけのようだった。 「あたしたちのために、職権乱用しろ!」 「生徒会長の立場を使え、ということだな?何がのぞみだ?」 「そうだな。手始めに、屋上のカギを自由に使えるようにしてもらおうか!」 「う…それはかなり難しいぞ…」 「嫌ならいいよ」 「なんとかしよう!」 「よし。それから学食のメニューのカマキリ炒飯を復活させろ!」 「それは生徒会とは関係な…」 「なにか?」 「再びお前にカマキリ炒飯を食べさせてやると約束しよう!」 「それから…そうだな、おいれいと、あんたは何かやってほしいことある?」 「おい、待てよ木崎、俺は閖原くんまで…」 「生徒会長、僕もあなたの秘密を握っているということをお忘れなく」 黒野は不服そうに顔を歪めた。 「………なにが望みだ」 「下級生が自由に上級生の教室に入れるような環境を作ってください。一カ月以内に」 「な、なんだそれ…」 「実行できなければ匿名で生徒会長の性癖をばら撒きます」 「ぐぬ…わかった。善処しよう」 「よーし。これで解決だな!さあ帰ろう」 「待てよ木崎、アドレスを教えろ。それから……」 「それから、なにさ?」 少女のように顔を赤らめて、黒野は言った。 「まだ残ってる血、きれいに舐めさせてくれ……」
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