第一章 監獄島へ

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ー現代ー 路面の状態が悪いのか、それともバスの調子が悪いのか定かではないが、私たちが乗る、この田舎の路線バスは良く揺れた。速水は、そのバスの後部座席に座りながら、ぼーっと窓の外の景色に目をやっていた。 速水が所属する、京都にあるWというそこそこ有名な私立大学の廃墟同好会のメンバーたちは、バスの車内に散らばりながら、それぞれ好きなことをやっていた。ーー速水は特にやることもないため、窓の外を眺めることにした。 しかし、外の景色は、一向に変わろうとはしなかった。小さな地方の在来線の、海沿いの駅を降りると、大海原が視界を埋め尽くした。もともと速水は山育ちで、海をあまり見たことが無く、そのときはその景色に感動した。だが、感動したのはその時だけだった。駅前の寂れたバス停でバスに乗ると、バスは海沿いの細くくねくねと曲がりくねっている道をひたすら行くだけだった。これから、速水たちが行く漁港までの時間は約1時間半。流石に、変り映えのしない景色には飽きて来ていた。 「つまんないな、まったく。たまから田舎の路線バスってのは嫌なんだよ」 そう声が聞こえた。声がした方を振り向くと、いつのまにか、速水の隣に副会長の國枝隼人が座っていた。彼との付き合いは長く、高校時代からの私の友人だった。背が高く、高校時代から柔道をやっているため、体つきは良い。髪の毛は短髪で、角ばった顔をした男だった。 「國枝か。お前も俺と同じ出身だろ?」 「ふん。ーーそれが嫌で、京都に出てきたんじゃないか。もう、この景色は見飽きたぜ」
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