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「あ、いや、なんとなく気になったというか」
なんとか取り繕おうと言葉を探すが、聞くことに妙に緊張し過ぎて、なぜ聞いたのかについて何も考えていなかった。だから適当な答えが咄嗟に浮かばずうまく答えられなかった。
桜はふーん、と怪しむような目を向けてはいたが、
「別に、いないけど」
と少し照れくさそうにも、呆れたように取れる表情をしながらもちゃんと質問には答える。
そっか、と裕太は苦笑い気味に返す。聞いたものの、それに対してなんて返事をすれば良いものかも分からなかった。
その後、しばらく2人の間には気まずい空気が流れた。
「恵太くん?」
その空気にいたたまれなくなった裕太が部屋へ戻ろうとすると、桜はテレビの方を見たまま聞く。
「え?いや・・・」
裕太は急な問いかけに焦って言葉が出てこなかった。
「やっぱりか」
その反応は、返答せずとも肯定していることに等しいものだった。
桜は一度裕太の方を見て呆れた表情をしてため息をつく。そして、すぐにまたテレビの方へ向き直っていた。
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