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朝、静まり返った部屋に携帯の着信音が鳴り響く。布団の中から、枕元を手探りで探している内に音は鳴りやんだ。
再び静まり返った部屋。まぁいいか、ともう一度眠ろうとするが、またすぐに携帯は騒ぎ始める。
何事だ?と、僕―伊藤裕太は身体を起こし、もう一度携帯を探した。急ぎの話だろうか?両親か?バイト先か?
しかし、やっと見つけた携帯の画面に表示されていたのは幼馴染の男友達の名前だった。しかも出れば、これから遊びに行かないかという、メッセージで送ってくれても問題なさそうな内容だった。
時刻はまだ8時を過ぎたところ。急なことだったし、面倒くさかったからパスしようとしたが、結局押し切られて行くことになった。
3月、世間では春と呼ばれる季節になった。段々と暖かくなって心地よい気候なってきてはいるが、日陰に入ればまだまだ肌寒い、難しい時期だ。
何気なく窓から外を見る。2階から家の前を、学校へ通う子供たちが歩いて行く姿が見える。既に高校が春休みに入っていた僕は、ちょっとした優越感に浸りながらそれを眺めていた。
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