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両親は仕事に行っていて家におらず、いるのは僕と桜だけだった。桜は既に着替えを済ませると、朝のように窓のそばに行って外を眺めながら、ボーッと壁にもたれている。
何か理由があるのか、それは分からなかった。そんな行動をとるようになってから、確か4年くらい経つ。心配ではあったが、病気と診断されなかったから、どうすることも出来ないまま。それに何年も経つと慣れてきてしまうのだろう、気にしないようになっていた―いや、多分気にしないようにしていたのだと思う。
11時を過ぎて早めのお昼を食べる。桜も黙々と食べている。僕はその様子をしばらく見つめていた。
桜の箸を持つ手はたどたどしい。言葉を発することもない。まるで小さい子供のよう。子供ならもっと反応を見せるのだろうか。淡々と食べ進める姿に少し寂しくも感じる。でも、ただそうやって普通に食事が出来ていることが嬉しく思う自分もいることに、最近気づきはじめていた。
12時ごろ、ジャージに着替えて家を出る。約束した場所は、少し家から離れた場所にある広い公園だ。1人なら自転車に乗っていく距離だが、桜は自転車が苦手だった。だから歩いて向かう。とはいっても家を出る時間には早かった。それは桜の歩くスピードに合わせるためだ。だから1時までに到着するにはこの時間で丁度良かったのだ。
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