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外は割と涼しく、少し風が吹くと寒いくらいだ。花柄のワンピースに紺色のカーディガンを着た桜は、僕の3歩後ろを歩いている。時折手を擦り寒そうにしながら、少し離れると小走りで戻ってくる、ということを繰り返していたから、僕は立ち止まって手を差し出す。無表情に握り返してきたその手は、すごく冷たかった。
不意に、双子であるはずなのに、年の離れた妹の面倒を見ている感覚になる。実際にいる訳では無いから、そんな"イメージ"なだけなのだけれど。
何を話すわけでもなく、ただ黙々と歩いている。たまに話しかけても、桜はただ頷き返すだけだ。でも僕は、反応を返してくれるだけでも安心する。
4年前まではそんなことも無かったのに―。不意にそんなことが頭をよぎると、そんな思いを遮るように冷たい風が強く吹きはじめた。
僕はつけてきたネックウォーマーを口元まであげると、繋いでいる手を強く握り直し、もう片方の手はポケットに突っ込んで歩いた。
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