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それから1週間後、私は兄上に連れられ、花の御所にやって来ました。
何でも、私と御所様の婚約は私達が小さい時に決まっていたそうです。
本人たちの意志なんて関係ないんですか?
でも、この時代は当たり前のようです。
何だか悲しいですね。
これから会った事もない婚約者に会うわけですが…
何ですか?この重苦しいというか、居心地が悪い空気は…。
「富子、大丈夫か?」
「はい。」
大丈夫なわけないですが、兄上に心配させる訳にはいかないので、そう言うしかありません。
暫くすると、1人の侍女が入って来ました。
「勝光様、富子様。此度はようお越し下さいました。大御台様と御所様がお見えで御座います。」
大御台というのは、日野重子様、つまり御所様のご生母で私たち兄妹の祖父である日野義資様の妹にあたります。
つまり大御台様は私たちの大叔母にあたります。
前置きはこれぐらいで…
ちょっとしてから、目が覚めるような翠色の打掛を着た女性と、何だか不貞腐れた顔をした私と歳の変わらない男の子が入って来ました。
「勝光殿、それに富子姫、よう来られた。」
「大御台様、御所様におかれましてはご機嫌麗しゅう御座います。」
「ほほほ、堅い挨拶はよしましょう。姫も顔を挙げよ。」
「はい、失礼致します。」
顔を挙げると丁度、御所様と目が合いました。
何でしょうか?この刺すような視線は…
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