将軍家へ輿入れ

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兄上と御所様を見返そうと決心してから、6年が経ちました。 あれから私は有りとあらゆる学問を学び、琵琶の他に、和琴の稽古もするようになりました。 猛練習した甲斐あって、都では私の琵琶と和琴の腕前は評判です。 近所の奥方衆も…… 「日野家の富子様の和琴の音は誠、美しゅう御座いますなぁ。」 「誠に…。目の前に情景が広がってくるようですね。」 「いつまでも聴き入って居りたいですね。」 って感じで、私の話題で持ちきりのようです。(これ、侍女たちから聞いた話です。) 学問の方は、元々私が読書好きなので、あまり苦にはなりませんでした。 新しい事が知れて、嬉しくなり、夢中になって、兄上たちが止めに入るくらいでしたからね。 そして今、私は将軍家への輿入れをまだかまだかと待つ日々が続いております。 「姫様、お隣から煎餅を頂いたので、お持ち致しました。少しお休みに成られてはどうですか?」 侍女の佳乃(よしの)がお煎餅とお茶を持ってきてくれました。 「煎餅ですか?頂きます!」 相変わらず、お菓子大好きな私は、読みかけの書物を机の上に置き、佳乃が持って来てくれたお菓子を見ました。 形は現代のモノと大差ないんですね。
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