臨也と京介

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 突然だが。  この世界には奇跡という言葉がある。常識で考えては起こりえない不思議な現象や出来事。それらは主に嬉々みたいなプラスの方で聞く。  日常生活でも安く使われる言葉。学生がふざけて使う場面もある。  だが今日この日。この瞬間では。彼――園崎臨也に本当の奇跡が起こる。 「いや、まぁ特にすることもないから帰るんだけ・・・――」  鳥の鳴き声が響く中そう呟き、颯爽と帰宅しようとする。  だが、その瞬間ベシャッ! という音と共に背中に何かを感じた。  視線や気配といった何かではない。もっと明確な感触。  一言で言えば冷たい。どこか濡れているような。 「・・・・・・・・・な、に」  理解した。してしまった。  視覚的に見たわけではない。だが、わかる。  先ほどの鳥の鳴き声。僅かにある襟元の隙間。謎の液体。    つまり、一直線に落下した鳥の糞が臨也の制服の中に入り込み身体についてしまったのだ。ミラクル。 「ぬ、がああああああああああァァァァァァァァァァァァああああああああああああああ!!!!!!!!」  叫んだ。周りにいる僅かな子供たちなど微塵も気にせず叫んだ。  その目尻には涙を浮かべ、背中に手を回して踊るように暴れた。傍から見てその姿は謎だ。 「なぜ、なぜじゃあああああああ!!!!! 頭にかかるならまだしもなぜェェェェェェェェェ!!!!!!」  わからない。なぜこんな奇跡が起きたのか。  だがそんな考えよりも不快感がどんどん増していく。 「たす、助け・・・! そ、そうだ! とりあえず制服を脱いで・・・」  公園にある蛇口で洗おう。  唐突に解決策がみつかり冷静と安堵を取り入れる。  だが。
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