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「ええ、その通りよ。
けど二百年前にミーア様からこの姿をもらってからはずっとこの姿ね。」
「ミーアというのはコアルス侯ミーアのことか?」
「ええ、彼女は本当に美しく、他の誰よりも智と勇に優れていたわ。
女性を蔑視する輩も彼女にだけは一目置いていた程よ。」
「その人とはどんな関係だったんだ?
その話ぶりだと彼女が公の場にいた頃から知っているようだな。」
「勿論よ。
戦場でも宮廷でもずっと一緒にいた私はコアルス侯の猛鷹と言われたものよ。
勿論、その姿は仮のものだけどね。」
「じゅあ、真の姿とは?」
「さぁ~
忘れてしまったわ。
で、ミーアのさま子孫を連れてきてくれたことには感謝するわ。
けれど今用があるのは彼の方。
コアルスの血を継いだ人間にね。」
そう言い魔物?はシルクを手招きする。
行けと言う風に頷いたアルスを見たシルクは歩み出す。
「どこへ行くのだ?」
「儀式の場よ。
ミーア様が亡くなった場所。」
「墓地でいったい何をするつもりだ?」
「・・・」
「答えてくれ!」
「はぁ、ミーア様には直接の子がいなかったことは知っているでしょう?」
「そ、そうなのか?」
「本当に何も知らないのね。まあ異母兄妹の息子、といってもその子が生まれてすぐに両親は亡くなって養子にしたんだけれども、彼が後を継いだらしいわよ。
ともかくそちらにはミーア様のご母堂から継いだ力が無かったの。
だからこんなことをしなければならないの。
…さてと、無駄話は終いにして、さ、ここに手を付いて。」
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