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ナウサルディア街道―はじめナウサルディアの修道院が率先して一帯の森を切り開き農地を拓いたことに由来する―を一人の少年が歩いている。
この辺りの農家では重い税を納めなければならないため小さな子どもまで働いているから恐らく旅の最中なのだろう。
しかし一人だけで旅をすると言うのは危険である。
特にこの辺りでは小さな村にさえ魔物対策に堀や塀を設けねばならないのだ。
たとえ腕がたつとしても寝ているときに夜行性の魔物に襲われればひとたまりもないのである。
実際に騎士団でさえ寝込みを襲われ、七年後に騎士団長の息子が、王都の西にあるセイル山脈麓のセイルの森の南で第九騎士団旗を見つけなければその騎士団の運命は悠久の昔からその地に漂う霧の中に隠されたままだっただろう。
彼はよっぽど何も知らないのかそれとも・・・
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…なんだ?あの坊主は?
随分と妙ちくりんな服を着てやがる。
肩から黒混じりの深緑色をした大きな布を被って全身をおおっている。
あんな服で前も首まで閉じてしまって暑くないのか?
というかどっから来たんだ?
語彙の足りない農夫に代わって作者が少年の服装を説明する。(農夫の語彙が足りないのはこの時代、教育は王侯貴族や富裕な市民の特権であるからだ。)
裸足ではなく革製の靴を履いている。木製ではない。そして服はマントに近く、内側には小袖のような服を纏っている。
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「ねぇ、あのおじさんこっちをさっきからずっと見てくんだけど…」
少年が頭の上に座り込む黒猫に話しかける。
勿論何もかえしてこな…い!?
「そりゃあお前みたいな奴は珍しいだろうさ。クォルに身を包んだ人間なんてもう殆どいないだろう。」
「いやまぁそうだろうけど…だけど…」
「知るか。自分でなんとかしろ。」
そう言うと黒猫?は欠伸をして眠ってしまった。
だが少年―アルス―は昔黒猫―ネスラ―が本当に頭の上で寝たときに落ちてしまいそれ以来寝るときはアルスのクォルに潜り込むと知っている。
つまり面倒なので狸寝入りしているわけだ。
その証拠に…
「狸寝入りするな。あと、爪が食い込んで痛いんだけど?」
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