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「いえ、お宅の娘さんが不治の病にかかったって話を聞きまして、もしかしたらと思ってきたんですが、ちょっと診せていただけますか?」
「君、随分若い様だし、すまんがお金も無いんだよ。」
「お金でしたら、僕と後もう一人この宿に暫く泊めてもらえればそれで結構です。」
「ふぅん…お願いしてもいいですか?」
「もちろんです。」
すると後ろから息をきらせたシルクがやってきた。
「お、おい!?何してるんだ?」
「まあ、取り敢えず待っててよ。」
「どういうことだ?」
「じゃあ、娘さんのところに案内してもらえますか?」
「わ、わかりました。こっちです。」
二人とも奥に行ってしまった…
それにしてもどういうことだ?
まあたぶん、さっきの八百屋のおやじさんの話にあったここの娘さんを治す代わりに泊めてくれということなのだろうけども…
不治の病だという風に聞いていたのだが、治す自信でもあるのかが疑問だ。
第一アルスは施療師の真似事をしていると言うか本職では無いように言っていた。
どういうつもりなんだ?
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ところ変わって宿の一階の家族用寝室の一角
そこには床が敷かれて件の女の子が寝かされていた。
齢は九、一〇歳といったところか。
しかし今は長いこと眠っているからか病のためか顔は土気色で唇も青ざめている。
「お母さんですか?」
アルスは女の子のの枕元で様子を見ている女性に問う。
「ええ、そうですが貴方は?施療師にしては若すぎますし家にもうそんなお金は無いですし……」
「あ、実は僕は施療師なんですが…
あ、あとお金でしたら、暫く泊めてもらえればそれで結構ですのでご安心を。」
と言ったものの不審げな顔をされる。
だが溺れるものは藁にもすがると言うか、
「は、はい、わかりました。どうか、娘を助けてください!!」
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