4、小さな手

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つい気が抜けたようになってしまうけれど、あたしにはやらなければいけない事が待っている。 電話番号を渡されたお客さま一人一人に、丁寧に電話を掛けていく。 その場で次の予約を下さるお客さまもいて、少しホッとした。 ……成れるかな…? って、今でも不安だけれど、成れるかな?じゃなくて成ろう。 自分で言い出した事だもの。 まだまだ道は長いけれど、月守旅館の七代目女将に、あたしが成るんだ。 ともすれば挫けてしまいそうな心の中で、繰り返し唱えながら背筋を伸ばした。 もうレンズに甘えては居られないと、箱に入れて押し入れの置くに眼鏡はしまった。 今まで頼っていた物を流石に捨てる事は出来なくて、ちょっと中途半端なけじめの付け方だとは思うけれど… 真っ直ぐに顔を上げると、武さんが運転する送迎の車が見える。 知花さまのお友達の到着だ。 「遠い所よくおいで下さいました。 ようこそ、月守旅館へ」 滑らかなおばあ様の言葉に、あたしも丁寧にお辞儀をして出迎える。 「十夢さんはっ!?」 降りてきた可愛らしい女の子は、今にも泣き出しそうに見えた。 「こんにちは、無理言ってすみませんでした。 るぅちゃん落ち着いてね~? 十夢は逃げないよ~、たぶん」 最初の方はあたしの顔を見ながら微笑んで言った。 …この方が大澤さま。 「よぉ、遅かったなぁ?」 あたしが口を開くよりも早く、いつの間に来ていたのか知花さまの声がした。 小さい体が知花さまのお腹の辺りに抱き付いている。 …今の動きは予想以上に早かった…… でも、ギュッと小さな手で抱き付いている姿は、桜ちゃんじゃないけど小動物って言葉がピッタリだと思う。
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