4、小さな手

4/20
前へ
/605ページ
次へ
部屋に入っても、知花さまの脇にピッタリくっついて座る姿に、大澤さまもため息をついている。 「遠い所よくおいで下さいました。 桜介の従妹の花乃と申します」 改めて挨拶をすると、大澤さまが甘い微笑みを浮かべて言った。 「昨日は電話に出てくれてありがとうね~? 桜介…心配だよね……」 「帰ってくると信じていますから。 ご心配下さりありがとうございます」 「う~ん…なんか固いんだよな~」 …桜ちゃんの知り合いとはいえ初対面。 知花さまに対するみたいに話すのは難しいんだけど… 「えっと…大澤さま…」 「それも駄目~!さまは何だか堅苦しいからさ~ せめて、さんにしてくれない?」 「はい」 素直に返事をすると、向こうの方からジトッとした視線を貰った。 「なんで翔の言うことは聞くんだぁ? 俺が何回言っても訊いてくんねぇのによぉ」 「今更変えるのも難しいし…」 あの頃よりは、少し頭が柔らかくなったと思って貰いたい。 それに大澤さん達に対しては、複雑な胸の内なんて無いんだもん。…仕方ないよね? あたしが心の中で弁解していると、知花さまの隣に座っている小動物が、初めてあたしに向かって口を開いた。 「ぁ…あの、取り乱しちゃってすみません。 十夢さんの喫茶店でウエイトレスしている瑠璃です!」 「ご丁寧にありがとうございます。 …えっと、瑠璃さんってお呼びすれば良いでしょうか?」 だって名字を名乗らないんだもん… 着信を見たから立花さまだって言う事は分かる。 でも…流石にそれを言うわけにはいかないよね…… な、なんでそんなキラキラした瞳で見てくるのかな? なんか頭を、わしわししたくなってきた…
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

536人が本棚に入れています
本棚に追加