4、小さな手

7/20
前へ
/605ページ
次へ
「花乃ちゃん…?」 「寝てますね」 ずっと慣れない『私』で頑張ってたんだ。 なっちゃんの腕の中でなら安心して『あたし』に戻ればいい。 「頑張ったからな… 俺がギュッてしてろうかなぁ、なんて思ったんだぞ?」 「しなくて良かったですね」 俺の言葉にニッコリと笑って見せる、なっちゃんの笑顔が……かなり怖い。 冗談だって… 花乃ちゃんは、なっちゃんの腕の中で、泣き疲れたのかあどけない表情で眠っている。 「見ないで下さい」 「隠すなよぉ、減るもんじゃなし」 「十夢に見られたら減りそうで心配ですから」 …俺の目線ってどんだけ力あるんだよ…… その時、まだ俺の隣から離れない瑠璃が、服の裾をちょっと引っ張った。 「どうしたぁ?」 「あの…なっちゃんさんは、花乃さんの彼氏さんなのぉ?」 なっちゃんさんって変だろ。 ちょっと変な呼び方は、一応気を使っているんだろう。どうなの?と視線に乗せてチラリと見上げてくる姿は、やっぱり小動物にしか見えねぇな。 今度おっきな胡桃のクッションとか持たすか。…探してみよう。 「どうなんだろうなぁ? 俺も知りてぇんだけど、そこの兄ちゃんがケチで教えてくれねぇんだ」 「と、十夢っ!」 珍しく動揺するなっちゃんに、瑠璃の視線が移動した。
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

536人が本棚に入れています
本棚に追加