4、小さな手

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「なっちゃん、一言いいかぁ?」 「…断っても言うんでしょう?」 「分かってんじゃん。 花乃ちゃんにさ、あんな言い方じゃなくて『花乃が好きだ』って言った事ねぇだろ?」 あの微笑みは、自分の心を押し殺した微笑みだ。 まぁ、なっちゃんだって分かってると思うけどなぁ? 「言っていいのか分からないんですよ」 「分かんねぇ?」 「…十夢は、ちゃんとごはんでも食べて下さい」 「おいっ!」 はぐらかすように言うと、なっちゃんは俺の声なんて聞かずに縁側から姿を消した。 後に残ったのは、甘いくちなしの香りだけ。 「んったく……なんであれが言えて、本人を好きだって言えねぇんだよ…」 「十夢さーん!居なくなってなかったぁ」 飛び込んできた瑠璃は、お膳は翔に持たせていて、また全身で飛び付いてきた。 …瑠璃、後ろの男が怖いんだが…… 本来、甘い筈の翔の顔が… 「武さんがねぇ、十夢さんは今日お休みで良いって!」 「…おいおい、良いのかよ」 「花乃ちゃんから聞いたよ~? 桜介帰ってくるって」 俺の前にお膳を置くと、翔が瑠璃を抱き寄せながら言った。 「あぁ」 「あれ?那月って奴は? あいつが予言したんでしょ~?」 「…予言っつうか……」 てか、普通はもっと変な顔しねぇか? こいつって、こんな信じやすい奴じゃなかった筈なんだがなぁ… 瑠璃に感化されたのか?
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