8、花の想い

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あたしは風邪がすっかり治って、明美ちゃんに栗饅頭を買うために、福田屋を訪れていた。 那月さんにもなんか買って行こうかなぁ… 栗饅頭と、いくつかの和菓子を包んで貰って店を出ると、店先の長椅子に置かせて貰っていた花を持って歩き出した。 今日は、何となくお母さんの所に行きたくなったんだ。 和菓子は壊れないように、そっと籠のバッグに入れて、花を持つ方とは反対の肩に掛けると、山道を登り始めた。 あの日の集中豪雨で、すっかり川になった山道は、今は少し埃っぽい位乾いて赤土を剥き出しにしている。 足元に気を付けながら登って行くと、すっかり濃い夏の緑に囲まれた墓地が姿を表した。 それでも、月守のお墓の回りは、綺麗に草が刈ってあって、誰かが度々訪れている事を教えていた。 誰なんだろう…… ふと、不思議になって辺りを見回した。 だって、おばあ様はこんな所まで一人では来ないし。 桜ちゃんが居ない今、月守に縁のある人はあたしとおばあ様くらいしか居ない。 「おわっ!?…嬢ちゃん……?」 隣の墓石に隠れて見えてなかったのか、いきなり近くで武さんの声がした。 「えっ?もしかして…」 「日課なんですよ。バレちまいましたね」
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