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翌朝、学校に行くと
「新聞見たか?」
と柚希が顔面蒼白で訊いてきた。
「いや?」
答えながら、寝不足から来る頭痛を払いたくて、首を振る。
「……たっつんが、交通事故で死んだって……」
「…………は?」
眠気が飛ぶ。
「……関係あんかな?」
「偶然だって」
「…………だ、だよな」
「…………」
なんとも言えない気まずさと気持ち悪さを感じた。
特に会話もなく、午前の授業が過ぎて、昼休みだった。
「…………」
なんとも言えない胸騒ぎがして、米が喉を通らない。
「ふたつとみっつ、みーつけた」
窓の外から声がした。
――ここ、四階だぞ……。
気のせいと思いつつも窓の外を見る。
「………………っ」
目の前を人が落ちていく。
長い長い悲鳴の後に、何か重い金属質のものが地面にめり込む
「ガシャン」
という音と、柔らかい物が、
「グシャ」
と潰れる音。
思わず立って、覗き込む。「……っ……――っ!」
声にならない悲鳴を上げていた。
地面にはフェンスと、同じ形をした二人の見知った花が咲いていた。
まるで悪夢みたいな光景なのに、あちらこちらから上がる悲鳴の合唱が、それを現実だと言っている。
学校はその場で休校になった。
屋上に上がった誰かが、フェンスの留め具がイタズラで壊されていて、二人はそれに気が付かずに寄りかかったんだと言っていた。
また、近くで見ていた誰かは、フェンスにのめり込み、ぶつかった側が切り刻まれたようになっていたと言っていた。
「なぁ……」
帰り道、一緒に歩いてい柚希が、俺に言った。
「とんでもない事になったな……」
「…………ああ」
「……次は……」
「止めろ」
俺は柚希の言葉を遮った。
「……偶然だ……偶然に違いない」
「…………そう……だよな……」
ト字路で立ち止まる。
「…………じゃあな」
「うん。それじゃあ」
手をふって別れる。
「みーつけた」
また、そんな声を聞いた気がした。
夢を、見た。
また、走っている夢を。
いや、今度は明確に追い掛けているので、同じ夢ではなかった。
夢の中の俺が、逃げている人に追い付いた。
「よっめも、みっけ」
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