#1~

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リナが九歳の春、村が上を下にの大騒ぎとなる出来事が起きた。 領主であるグルンデル候が近くの丘で兎狩りを行うことになり、休憩のために村へ来訪することになったのだ。 グルンデル候は三つの都市と百の町村を統べる領主で、国王に謁見することも許されているほどの大貴族、失礼があれば村長はじめ村人全員が処刑されてもおかしくはない。 村ではできる限りのもてなしをするべく準備がされた。 歓迎の宴は狩りの終わった夕刻、村長の屋敷で行われた。 山のようなご馳走と華やかな踊り。収穫祭でしか見られないような豪奢な光景の中、グルンデル候の眼に止まったのは給仕に走り回るリナの姿だった。 「十五歳の誕生日を迎えたら城に連れて来るように」 その日からリナの生活が一変した。 それまでの家畜の世話や屋敷の掃除、食事の支度、後片付け…朝起きてから夜寝るまでの間、休む間もない仕事から解放され、代わりに礼儀作法や学問、美しい身のこなし方や化粧の仕方などを学ぶ毎日となった。 同性の妬みは変わらないものの、扱いは変わった。何か穢いもののような扱いから腫れ物に触るように。 リナはグルンデル候の妾として召し抱えられるのだ。リナの身に何かあれば極刑もあり得る。 変わらないこともあった。それは毎日が苦痛の連続であること。 リナの生活のすべてはリナの意志とは無関係に進められていた。
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