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グルンデル候の居城に来てから一週間が過ぎた。 初めはどこに行くにも常にワスラと一緒だったが今ではすっかりと慣れて一人で行動していた。 リナには、一週間過ごしてわかったことが幾つかあった。ひとつは城の構造。最初は薔薇が咲き誇る庭園のあまりの美しさから、王公貴族の住まうきらびやかな王宮のように思っていたが、ここは紛れもなく戦に生きる将軍の要塞だった。 城を囲う二層の高い城壁はひとたび城門を閉ざせば侵入者を寄せつけず、何とか二層の壁を越えて侵入を果たしたとしても、城内部は迷路のような構造をしている上に何ヵ所かに吊り上げ式の橋が仕掛けられており、これを上下することで臨機応変に通路が変わる。侵入者は右往左往しているうちに階上の通路から弓で射られ、前後を挟撃されることとなる。 リナが知る限り、リナが生まれた十五年前から今に至るまで、ここが戦場になったことはない。 それでもここまで備えているのはグルンデル候が根っからの武人だからだろう。 そしてわかったことのふたつめ、そのグルンデル候自身は、この居城にあまり居ないこと。 グルンデル候はリナが思っていた以上に多忙な人物だった。 領主は自分の領地では王に等しい権力を持っている。だから普通は領地の居城で我が物顔で執政をふるうものなのだが、グルンデル候は特別に王の信任も厚く、直接意見を求められることが多いため、最近はほとんどの時間を王宮で過ごしているのだという。 そのため、ここに来て一週間が経過した今でもリナはグルンデル候に一度も会うことはなかった。
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