僕はいつも通りの日常を送る

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しかし、時にはお礼以外のコメントをしなければならないと気がある。 『ところで、今特集されている「神経衰弱」ってホラー小説読みましたか?』 ももっちーさんからだ。この人は面白い小説を見つけると僕に読んだかどうか聞いてくる。 話題を振られた。 これに『ありがとーゴザイマス!!』と返信するのはおかしい。それは流石に解る。 かと言ってまともに答えるのも面倒だ。ももっちーさんから話題を振ってきた時は大抵話が長くなる。読んでいようがいまいが関係ない。その小説のキャラの魅力的なところや内容、描写の良かったところなどを送れる文字数ギリギリまで書いたコメントを何ページにも渡って送ってくる。 ももっちーさんは書いていて面倒臭くならないのか? と小説について語り出したももっちーさんの文章を見てよく思う。たぶん面倒でも苦でもないんだろうな。ももっちーさんは本気で好きなことならどんな苦労も楽しんでやってしまうタイプの人っぽいし。 僕にはコメントを無視する選択肢もある。が、ももっちーさんは僕ことミノタロスと友好的に接してくれる数少ないクリエイター仲間だ。なるべく蔑ろにはしたくない。 となれば、僕に残された選択肢はひとつしかない。 『読んだことありますよ。あれかなり怖いけど面白いですよね』 返信してから数分後、ももっちーさんから返信が来た。思っていたとおり、送れる文字数ギリギリのコメントが4つも届いた。 僕は全部読んでからまた返信する。ももっちーさんからの返信を待つ間は小説の続きを妄想して、それを文章にしていく。 朝起きて、学校に行って、小説を書いて、寝る。 これが僕の日常。このサイクルをほとんど毎日続けていた。退屈だけど、不満はあるけど平和だった。無理に変えようとは思わない。 これからもこの日常は続くんだと……この時までは信じていた。 しかしこの翌日、僕の日常に波紋が生まれることになる。その波紋は僕の日常に求めていた以上の刺激を与えて、簡単に崩した。 僕の平和は、いつもの日常は翌日の放課後に終わる。 そしてその瞬間から刺激的な毎日が始まることになる。 さながら小説の主人公のように、僕は毎日をたうち回る。
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