平和だった僕の日常を女子達が掻き乱す

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目覚めの瞬間について詳しく語れる人間がこの世にいるだろうか。 少なくとも俺の人生の中で語れるヤツはいない。大抵の人は、そう、 気づいたら起きていた。 と、答えると思う。 目覚めというのはひどく曖昧だ。どこまでが眠りでどこからが目覚めなのか、その境界線を引くのがとても難しい。 なんとなく、手が布団や枕ではない何かを触っている気がした。 気がした、と思った時点でもう俺は目覚めていたことになるのかもしれない。しかしその時点の俺は意識がほとんどなく、すぐに手にある感触を忘れて再び深い眠りに落ちようとする。 「………っ!?」 落ちかけた意識が急速に浮上した。さっきよりも意識がはっきりした、というか目が覚めた。 何か今、叫び声みたいな声が聞こえた気がする。俺はもう少し眠気を覚まさせようと顔を包む枕に顔を擦り付ける。 ゴシゴシ……あれ? 俺の枕って、こんなに柔らかかったっけ? 「……ミノル、さん……そんなに顔を擦り付けたら、駄目ですぅ……」 耳元で声が聞こえた。女の子の声。ま、まさか……! 俺は顔を上げる。そこで初めて自分が勘違いしていたことに気付く。 俺が枕だと思っていたものは、枕ではなかった。透き通るような白色の2つのお山……ぱいぱいだった。 さらにもう少し目線を上にあげると、生まれたままの姿で頬を赤くする金髪碧眼の美少女もといワルキューレ――ヒヨル・スリムルさんと目が合った。 「お、おはようございます」 「……お、おお、おはおはおはおははあああああああああオパ――――イ!?」 自分好みの美少女が全裸で自分のベッドで横になっている。そんな状況でまともに挨拶できるはずがなかった。 その衝撃的光景を目の当たりにした俺はベットについていた手足をフルに使って後ろに跳びヒヨルさんと距離を取ろうとした。 この時、俺は自分のベッドがシングルベッドだということをすっかり忘れていた。シングルベッドということは1人が寝るスペースしかない訳で、後ろに跳んだ俺はものの見事にベッドがら転げ落ちた。 ゴン!! と後頭部を打った。痛かった。でもそれを感じたのはほんの一瞬だけだ。 頭からベッドから落ちた俺はゴロゴロと転がって、ベッドから最も離れた壁まで移動した。
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