1411人が本棚に入れています
本棚に追加
もしも僕が今から奇声を上げて教室の窓を全部割ったら、世界は面白い方向に傾くだろうか。
2月のとある平日。高校の休み時間。雲一つない澄み切った空を頬杖をついて見ながら僕――三谷実はそんなことを考えていた。勿論そんなことをしたって世界が面白い方向に傾くはずがないことは誰に訊かなくても分かっている。
ちなみに、クラスにいる男子グループや女子グループがガヤガヤワイワイと無駄に大きな声でどうでもいい話をしていることに腹を立てている訳ではない。入学したばかりの頃は騒音のようなこのお喋りに何度か苛立ちを覚えたものだが、毎日のように効いていると不思議なもので騒音だと感じなくなっていた。
この半年の間に、俺の耳は彼らの声を蝉の声と同じものと認識するようになっていた。
しかし、彼ら彼女らはどうして毎日のように喋れるんだろう? 飽きないのか? それ以前に、毎日話をしていたら話す内容がなくなる気がするんだが。
まっ。いくら考えたところで僕にその疑問Qに対するAは出せないか。だって僕にはQを出す相手が……『友達』がいないんだから。
友達がいない。僕がそうだと知った人はどう思うのだろう。やっぱり可哀想だと思うのだろうか?
思っているのなら、僕ははっきりとこう答える。あなたは勘違いしている、と。僕は友達を作れないんじゃない。友達を作らないんだ。
誰かにそうしろと言われたわけじゃない。自分で決めたこと。
だから現状を満足している。寂しいと思ったことは一度もない。ただ、少しつまらないだけだ。
この高校に入学してからもう半年が経ったが、僕の日常は毎日がつまらない。
学校に来て、授業を受ける。休み時間はひとりで過ごす。昼休みは誰もいない静かな場所でご飯を食べて、午後の分のエネルギーを蓄える。
僕の学校での行動パターンは起きて授業を受けるか、寝たフリをするか、本当に寝てるか。大まかに言えばそんなところだ。そればっかりだから毎日がつまらないと感じてしまう。
ちょっとした変化が欲しい。
そう思ったから、文頭に戻るわけだ。
最初のコメントを投稿しよう!